006 / 松葉琉我

株式会社Next Edge 代表取締役

プロフィール

2016年
立命館大学入学
2018年
University of Washington 入学
株式会社Next Edge 設立
2019年
放課後児童健全育成事業「Kids Lab.」創業
立命館大学U25アクセラレータープログラム「Re:Vive」運営責任者就任

社会とスムーズに接続するための民間学童

アントレプレナーシップを育成するインキュベーション型プロジェクト

活動概要

10年後社会とスムーズに接続するための力をつける民間学童「Kids Lab.」の運営。楽しみながらも実践的なプログラミングやネイティブとの交流を前提とした英会話、やりたいを形にし、アントレプレナーシップを育成するインキュベーション型プロジェクトなどを教室内で展開。

Q1「現在どのような活動を行っていますか?」

 教育事業としては、小学生対象の学童保育と大学生対象のアクセラレータープログラムの運営を行っています。

アントレプレナーシップを育成するプログラムとは?

 小学生の方でやっているんですけど、自分の興味のあることや不思議に思ったことを、雑談の中から引き出して、“プロジェクト化”していくっていうものです。おもしろいのでいったら、①ゴキブリの化学物質に対しての防御反応の研究をやっていたりとか、②火星でも飛ぶ飛行機の開発っていうのをやっていたりとか、そういうのを一緒に学んで(研究して)います。あとは、どうしても行き詰ってわかんないこととかがでてきたら、専門家の人を呼んだりしていて、この前はアートの勉強を一緒にやったんですけど、そこでも専門家の方に来て頂きました。他にも、大学で専門に研究されてる方に会いにいったり、そういうことをやるのが“アントレプレナーシップ”です。

事業で使われている、教育版マインクラフトって何ですか?

 エデュケーション版のマインクラフトというのがあって、科学の実験とかをその中で行うことができます。そもそもマインクラフトを知っている人がどれだけいるかちょっとわかんないんですけど、実際に体験している小学生とかは、みんな「すごいおもしろい」って言ってます。簡単にいうと現代版のデジタル版レゴみたいなものですね。ブロックを組み立てていって家を作ったり、すごい人だったら町全体を作ることができるんです。化学反応の実験やプログラミングもできるんですが、うちでは、コロナの影響で日本に来れなくなった外国の方に向けて、自分たちが今までいったことがある日本の名所(例えば、外国の方に人気がある京都の街並みなど)をマインクラフトの中で再現しました。一緒にその世界を探検しながら、外国の方に向けて英語で旅行プランをプレゼンする。ちょうどコロナ休校で子どもたちも暇だったので、一緒にやろうって言ってやってました。

後ろのそれ(駄菓子屋)は何ですか?

 これはお金の勉強の一環ですね。普通の学童保育って、一人分がお皿に盛られてたり、「これがあなたの分です」みたいに出されることが多いんですけど、それってあんまり勉強にならないというか、資本主義っぽくないので。うちでは月に1回、教室からお小遣いを渡して、ここにあるものとか、冷蔵庫の中のアイスやジュースを、自分でそのお金の中から好きな分だけ買うってことをやっています。やっぱり最初に使いすぎると、どんどん月末苦しくなるみたいな状況になるんです。なので、月の終わりにみんなで振り返りをして、「その日は多かったね」みたいな話をしています。大人になってもあるじゃないですか、クレジットカードの引き落としの日「やべー、思っていたより使い過ぎていた」みたいな。そうやって大人になってから学ぶのも良いと思うんですけど、取返しつかないことになったりもするので。子どもの内からそういうお金の感覚とかを身につけてほしいっていうので、うちでは駄菓子屋さんを作って、駄菓子は購入制にしています。

Q2「あなたが考える、現在の教育業界が抱える課題や問題点は?」

 めちゃくちゃいっぱいあると思うんですけど・・・

 僕らは、教育って社会に出るために、社会をもっとより良くする為の人材の育成の場だと思っているんです。けれど、実際(現在の教育では)それができているかと言われると…なんか教育でやったことと全然違うことを大人になってからやっている気がします。(現在の)教育だったら先生が何かを教えて、それを教えてもらった手順通りに解けて、ちゃんと言うことを聞く人が、テストの点数も高いし、偏差値も当然高いし、良い学校にいける。先生からも認められて、保護者からも褒められるっていうのがあると思うんですけど、実際に会社に入った後や、社会に出たときに、「言われたことをやるだけで良いか?」って言われると、全然そうじゃないだろうし。自分がやりたいこととか、自分だったらこうするみたいなものが求められる。そういった社会にどんどんなってきているのに、それに教育が全然ついていけてないっていうのが課題意識で、根本的な課題だと思っています。要するに、“教育と社会の接続がすごく悪い”っていうのを感じています。

社会との接続というのは、具体的にどのようなイメージですか?

 例えば、海で泳ぎたいってなったときに、まずプールで泳いで、泳ぎを覚えてから海に出る。そっちの方が溺れないだろうし、勝手が違うかもしれないけど水に慣れているっていう意味では良いじゃないですか。なのに、今の教育って、ひたすら50m走を走った後に海に出たりしている気がします。50m走を社会に出てやるわけじゃないのに、教育の現場では50m走をずっとやっているみたいな、そんな感じだと思っています。もっと社会でやることを教育でもやったらいいんじゃないかな。社会で使える考えとか、社会の人が当たり前にやっていることをもっと教育に取り入れたらいいんじゃないかなと思っていて、よく“社会を教材化する”と言っていて、社会で起こっている「生の出来事」みたいなものを教育に取り入れ、考えたりする機会が、もっとたくさんあっても良いんじゃないかなっていうのは思っています。

どのような時に接続の悪さを感じますか?

 やりたいことがそもそもあって、必要だから知識をつけていくって順序が、本来あるべき姿というか、正しいんじゃないかと思うんです。でも、教育の現場では、学んだ先が全然見えてこないというか、見せられてないっていうのをすごい感じています。受験勉強をやって何になるのか、よくわかってない人が多いとか、勉強してテストやって、それが自分の将来にどう繋がっているのかあんまよくわかってないみたいな人が多いんじゃないかな?自分がそうだったので、そこはすごい思いますね。

Q3「将来、日本の教育はどうなる(べきだ)と思いますか?」

 どうなるべきかで言ったら、もっと“多様な評価がされる教育”であってほしいなとは思います。やっぱり今って、定量的に把握できる指標が少ないので、偏差値とか「お勉強」でどれだけできるかっていうことでしか、評価される機会や周りから認められる機会っていうのが無いように思います。だから、色んな子の才能とか資質とか、発見しきれていないんじゃないかなって。あの子は勉強ができるけど、僕はなんか違うことができて、あの子は絵ができるとか。そういう、多様な評価であってほしいなっていうのは思いますね。そうなっていってほしい。でも、実際はあんまり変わんないと思います・・・。

多様な評価というのは、例えば?

 なんかこれ結構むずかしいなぁって思うんですよ。そもそも評価しなきゃいけないのか?みたいな根本的な問いに立ち返る感じがするんです。難しいですね。「多様な評価をしろ」と言いながら、具体的に何かっていうのは・・・。プロジェクト型学習とかデザインシンキング※1とか様々な活動を通して、「どれだけ社会との接続が良くなっているのか」っていうのをもっと定量的に、把握したいなとは思って、社会的インパクトの評価を測ったりしているんですけど、既存の枠組みにあてはめると、伸びてるんですけど、それはそれで「そうなのかぁ?」とも思います。みんな「良いよね」って認めあえてくれたらそれで良いんですけど、難しいですね…。はい、難しいです。

アメリカ留学の際に「教育」に対する空気間の違いとかは感じましたか?

 “やりたいことを実現するために何かをやる”っていう感覚を小さいときから持つように、周りの環境がそうしてくれたんだろうな、みたいな人が多かったように感じます。教授へのアクセスも、色んな学生がしてましたし、質問のレベルもすごく高かったです。僕が英語をよくわかってないから「すげーな」と思ってただけかもしれないですけど(笑)「自分で調べればわかるじゃん」みたいな質問はしてなかったですね。

 社会と教育の接続みたいなところでいうと、アマゾン※2の人が大学に遊びに来て一緒に仕事をしながら勉強を教えていたり、逆にアマゾンの本社に大学生が遊びにいくみたいなことも普通に起きていて、その辺がやっぱり全然違うなぁっていうのは感じていました。なんでそうなったのか?みたいなところは、アメリカにそこまで長く住んでいたわけじゃないのでわからないんですけど、15,16歳ぐらいまでの周りの環境が、色んなことを認めて、やらせてあげられる、みたいなところがあったんじゃないかな?とふわっとは思っています。

教室運営で大事にしていることは何ですか?

 「自分のやりたいことをどう実現していくか」というところに重きを置いていて、僕らは教えないし、指示もしない。でも、手伝うことはできるし、提案もする。決めるのは本人。パッションみたいなものを最大化するお手伝いを僕らの教室ではやっています。プログラミングとかも全部そうで、自分たちのやりたいことっていうのを、テクノロジーの力を使って実現していく感覚を身につけてほしい。あえて教材も絞らずに、マイクロビット※3をやったり、LINE entry(ラインエントリー)※4みたいなちょっと遊び系のものをやったり、ロボットのプログラミングをやったりとか、色々組み合わせながら、「実現できる」感覚を持ってほしいなっていうのはすごい思っています。

SQ「自分を漢字一文字で表すならば?」

 なんだろう?これだけ、ためたら言いづらいですよね。唯一の…“唯”です。ちっちゃいときに言われていたのが、“唯”我独尊。なので、それ(唯)です。

※1 デザイン思考(デザインシンキング)

発生した問題や課題に対し、デザインを行う際に必要な考え方と手法で解決策を見出すこと。2005年にスタンフォード大学によって創設されたd.school(正式名:The Hasso Plattner Institute of Design)が提唱したことにより世に広まった。出典:大塚商会『IT用語辞典』https://www.otsuka-shokai.co.jp/

 

※2 アマゾン(Amazon.com,Inc.)

シアトル(アメリカ)に本拠を置く多国籍テクノロジー企業

 

※3 micro:bit(マイクロビット)

イギリスのBBCが主体となって作った教育向けのマイコンボードです。英国では11歳~12歳の子供全員に無償で配布されており、授業の中で活用が進んでいます。ユーザーが動作をプログラミングできる25個のLEDと2個のボタンスイッチのほか、加速度センサと磁力センサ、無線通信機能(BLE)を搭載しています。USBケーブルでPCと接続し、プログラムをドラッグアンドドロップで書き込むことが可能です。出典:『DISの教育ICT総合サイト』https://sip.dis-ex.jp

 

※4 LINE entry(ラインエントリー)

LINEが提供するプログラミング学習プラットフォーム 出典:『LINE公式サイトPR』https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2019/2869

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